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人生の果てにある境地 ES2
入院してからは、ベッドに横たわる日々が続き、筋肉がなくなって身動きが取れなくなることに大きなな恐怖を感じるのです。

この先どうなるか分からない不安、そして人間として当たり前にできていたことができなくなった哀しさの中、生きていく自信を与えてくれたのは、夫の励ましと献身的な支えだったという。

入院してからというもの、夫は毎日仕事を終えた後、車を走らせ伊丹から大阪まで見舞いに来てくれていた。


妻がいない家の様子をぽつり、ぽつりと話す夫が、ある日、こんなことを言った。

「きょう子どもたちに"お母さんは世界中を探しても一人しかいないんやから、お母さんがよくなるまでみんなで頑張ろう"って言ってきた」


発病以来、自分の身に起きたことで頭がいっぱいで、家族がどんな気持ちで過ごしているか思いを馳せる余裕もなかった。

それどころか、こんな体になって自分は妻らしいことも、母親らしいことも何一つしてあげられないどころか、トイレすら一人ではまともにできない。

こんな妻なら、こんな母親ならいないほうがいい、とそんなふうに卑屈に考えている自分がいることに気づく。


「どんな体になっても最後まで俺が面倒見るから安心しろ」「おまえの元気なエプロン姿をもう一度見たいから、何があっても頑張ろな」

夫の言葉を聞くたびに全身が熱くなり、感激のあまり体が震えている自分がそこにはいた。

そうや!いくらしんどくても、ベッドに吸いつけられたままではいかん。

ここまで言ってくれたなら元気出さないかんわ、と魂を揺り動かされ、この病と闘う決意をするのです。


夫のため、子どもたちのために何とかして生きたいと思い、夫と2人で医師に相談すると、医師からはこんなことを言われた。

「一つだけ薬があります。しかし、それが古結さんの体に効くかどうか、のんでみないと分かりません。のんでもし効果がなかったら、いまよりもっと筋肉は衰えます。たとえ体に適合しても様々な副作用に苦しむことにもなるでしょう」そう言って、副作用の過酷さを説明してくれた。

その薬とは副腎皮質ホルモン、いわゆるステロイドで、のみ出したら途中で止めることはできないのです。


しかし、その時点で古結さんは気づいていた。

日に日に全身の筋肉がなくなっていく中で、これで、もしも心臓の筋肉まで衰えてしまったら、その先にあるのは死しかないということに。

医師に尋ねると、病の進行の早さから考えて、それは半月か1か月後にまで迫っていた。

副作用があるとはいえ、副作用が出る前に死んでしまっては意味がないと考え、その薬の使用をお願いするのです。


昭和57年の10月4日の夕食後からステロイド治療を始めることになっていた前の晩、夫は「明日はいつもより早く来るよ」と言って帰って行った。

しかし、時計のように毎日決まった時間に来ていた夫が現れることはなかった。

義兄が経営する工場で働いていた夫は、クレーンの点検中、鋼材の下敷きになり、事故にあっていたのです。

肋骨のほとんどを折り、内出血はひどく、背中に受けた損傷はあと数ミリで脊髄に届くところだった。


話を聞きながら、古結さんは「命は……?」と言うのが精いっぱいで涙も出なかったという。

人はショックが大きいと涙も出てこないことを、その時初めて知るのです。

妻の入院後の生活はすべて夫が支え、娘の協力を得ているとはいえ、慣れない家事を行い、子どもたちの面倒を見て、仕事をし、その後に車を走らせて見舞いに来る。

妻の容態は一向によくならず、心の苦しみを誰にも言えずお酒の力を借りて寝ていたことも後で知るのです。


集中治療室で生死を彷徨う夫の身を案じ、「これからは自分がしっかりせないかん!何とか早く元気になって2人の子どもたちを守らなければ!」と思い、のみ込むたびにむせ返るステロイド剤を、口の中に押し込み食べながらのんだ。

「この薬に負けたらいかん、この薬で元気にならないかん」と一口ごとに自分にそう言い聞かせていた。


両親とも明日はどうなるか分からない不安の中で、息子は親戚の家で、高校受験を控えた娘は実家で一人で暮らすという寂しさを味わわせていた。

一日も早く子どもたちの元に帰れるよう、縋(すが)れるものには何でも縋ろうと思い、写経をしたり、お地蔵さんの前掛けを縫ったり、自分のできることは何でもした。

次に続く!


生きててよかった―膠原病とともに
生きててよかった―膠原病とともに古結 芳子

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Author:ニック
■ニックネーム:人生の彷徨人
■住まい:神奈川県
■半世紀を過ぎた人生を振り返り、4人の息子に囲まれながら第二の人生を歩んでいます。

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