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忘れえぬ人々 ES2
要するに僕は絶えず人生の問題に苦しんでいながら、また自己将来の大望に圧せられて自分で苦しんでいる不幸(ふしあわせ)な男である。

そこで僕は今夜のような晩に独り夜更て燈に向かっていると、この生の孤独を感じて堪え難いほどの哀情をもよおしてくる。

その時僕の主我の角(つの)がぼぎり折れてしまって、何だか人懐かしくなってくる。

色々の古いことや友の上を考えだす。

その時、油然(ゆううぜん)として僕の心に浮んでくるのは、即ちこれらの人々である。

そうでない、これらの人々を見た時の周囲の光景の裡に立つこれらの人々である。


我と他(ひと)と何の相違があるか、皆な是れこの生を天の一方地の一角に享けて悠々たる行路を辿(たど)り、相携えて無窮の天に帰る者ではないか、というような感が心の底からって来て我知らず涙が頬をつたうことがある。

その時は実に我もなければ他もない、ただ誰れも彼れも懐かしくって忍(しの)ばれてくる。


僕はその時ほど心の平穏を感ずることはない、その時ほど自由を感ずることはない、その時ほど名利競争の俗念消えて総ての物に対する同情の念の深い時はない。

勝ち負けや損得といった世の価値観に振り回されている自分が、真夜中にふと一人の人問に立ち返った時、そういう主我の角(エゴ)が消えて、自分も他人も、ともにこの世に生かされている存在という思いがしみじみ湧いてくるというのです。


一人ひとり個性も違うし置かれている環境も違うけれども、すべての人問は天の一方地の一角に生を享(う)けて、一つの天に向かってお互いに助け合いながら歩み、やがて無窮(むきゅう)の天に帰っていく存在である。

そう思うと、人間がたまらなく懐かしくなるというのです。

今の世の中、弱肉強食の醜い様相を呈し格差はますます広がっています。


ある時期、この国も「自分さえ成功すれば」「自分さえ楽な生活ができれば」と目の前の欲望に翻弄されて、空しく人生を終えた人も多いと思います。

しかし、いかにエゴむき出しで生きる人であっても、大宇宙の奏でる調べは、ちょうど琵琶僧の琵琶の音色のように、すべての人々の心に届いています。


はかない存在のように思えても、その根底は大宇宙に繋がり、一つの命を分かち合って助け合って生きる存在であると思います。

生かされた命に感謝し、お互いに助け合って生きる。

いまの厳しい時代は、そのことを学ぶ大切な機会なのではないかと、この記事を読んで思った。



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Author:ニック
■ニックネーム:人生の彷徨人
■住まい:神奈川県
■半世紀を過ぎた人生を振り返り、4人の息子に囲まれながら第二の人生を歩んでいます。

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